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​『ひろしまのスケッチ』

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 四国五郎(しこく ごろう)の『ひろしまのスケッチ』を手に取ったのは、広島の風景を描きはじめる前のことでした。​この本を手にして以来、よく持ち歩いていたので、ずいぶんとボロボロになってしまいました。

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 『ひろしまのスケッチ』は昭和60年に出版された本で、四国五郎が何十年にもわたり描いたスケッチが掲載されています。そのため、現在の広島の風景とは異なって見えるものも多いです。

 自身のスケッチを「ヒロシマを手さぐりする過程」と四国は語っていますが、広島の画家にとってその歴史や意味を探求することと同時に、変化する街並みを記録することも重要だったのではないでしょうか。彼らのスケッチには、もう見られない風景が数多く残されています。

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 広島の都市風景は、いまも日々変わり続けています。広島市中心部では、広島駅前や中央通りの周辺で再開発が進んでいますし、僕が2年ほど住んでいた西広島駅も新しい姿へと様変わりしています。

 圓鍔勝三(えんつば かつぞう)の《花の精》は、かつて広島城南広場に噴水と一緒に設置されていましたが、ハノーバー庭園の近くに移設され、噴水は跡形もなくなりました。広島城を背にしていた《花の精》は、いまは完成されたスタジアムを背にして建っています。当たり前のことかもしれないですが、描いた景色は刻々と変化し、気がつけばあっという間に無くなってしまいます。​​

 「都市美も都市理念も、永久に完成することはない。いわば、絶え間ない創造活動の繰り返しであり、それを担うのは、ほかでもない、広島に住む私たちである。」と四国は言います。

 

 この創造活動の積み重ねが形づくった都市の美しさや理念は、どのようなかたちで私たちの目に映るのでしょうか。この街の画家たちに学びながら、スケッチブックに代わってスマートフォンを手に風景を描き続けるうちに、僕にとってのスケッチは、“ひろしま”を手さぐりする過程になっていたのかもしれません。

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​​​​​​ ある日、四国が比治山にある黒松を広島洋画壇の先輩にあたる山路商(やまじ しょう)が描いたものだと著書で紹介しているので見にいくと、ありし日の姿は微塵も感じられず、黒く朽ちた木が雑草の中に埋もれていました。すぐそばの被爆桜は、大切に保護されていて、そのコントラストに私たちの積み重ねを感じずにはいられませんでした。

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​2024年6月26日撮影

​ひろしまスケッチMAP 2025

「ひろしまスケッチMAP2025」は、広島市街にある4つの店舗にそれぞれ置いてある手嶋勇気の作品の鑑賞し、設置してあるQRコードを読み取ることで作品に関連したエッセイを読むことが出来ます。店舗を巡りながらこれまでに描かれた場所や活動の軌跡をたのしんで頂けると幸いです。

​エッセイ

​『ひろしまのスケッチ』 ー Bookscape

coming soon ー (本と自由)

​Google mapsで店舗の情報がご覧いたでけます。

© 2020 Yuki Tejima

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